植芝盛平

植芝 盛平(うえしば もりへい)という、合気道の創始者を知っていますか?

1883年12月14日、和歌山県田辺市の農家に生まれ、中学校を中退し、税務署勤務を経て文房具卸売り業を開業。その傍ら武術を学び、日露戦争の兵役後、、北海道紋別郡白滝村(現遠軽町)の原野に開拓農民として移住。

1917年、父親の危篤の報を聞き帰郷した後、宗教団体大本に入信し京都の綾部に移住。
1919年、綾部で「植芝塾」道場を開設。
1922年、出口王仁三郎の命名で自らの武術を「合気武道」と称す。
1969年4月26日没。

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合気道(あいきどう)は、日本古来の柔術・剣術・杖術などを基に現代武道です。
日々の練習により、不必要な体の場所からは力を抜き、相手との接点となる処に全身の力を集中させる事が出来るようになり、自分より体格の優れた者を征する事が可能となる。また、精神性を他の武道よりも重くみている。技は、体術・武器術(剣・杖)を含み、対多人数の場合も想定した総合武術であった為、戦中戦後を通し、軍や警察で研修が行われました。

この方も驚嘆する能力がありました。


■盛平翁(70歳)の怪力ぶり
・7、8人の人たちが力いっぱい押してもビクともせず道に立ちふさがっていた黒松の根おこしを、盛平翁が一人で行ったところ、軽く揺すっていただけで根を抜いてしまった。

消防隊員の訓練のため、盛平翁が両足を開いて立ち、4~5m下がった位置から相撲のぶつかり稽古のように隊員達が突進して胸に体を打ちつけたが、盛平翁は一歩もさがることなく、全員のあたりを受け止めた。

盛平翁が壁に人指指一本を押しけ、その腕に二人の柔道家(約150㎏)がぶら下がったが、盛平翁は顔色ひとつ変えず二人を腕にぶら下げた。


■神技「弾避け」
あるとき、陸軍の砲兵官の方が、軍の関係者を九人ばかり連れて植芝道場にやって来ました。合気道という素晴らしい武道があるから見学しろ、というわけです。

そのときいっしょに来た人たちというのは鉄砲の検査官でした。検査官というのは、作ったばかりの鉄砲を実際に撃ってみて、銃身が右に曲がってるとか左に曲がってるとかを判断する人たちなのです。射撃の腕前はオリンピック級で、私が見せてもらったときも本当に百発百中なのでビックリしました。

そういう人たちを前にして演武を行った植芝先生が、そのとき「ワシには鉄砲は当たらんのや」と言ってしまったのです。

確かに植芝先生は、蒙古で馬賊と闘ったときに鉄砲の弾をよけたと聞いていましたが、しかしこのときは相手がいけません。検査官の人たちはプライドを傷つけられて、すっかり怒ってしまいました。

「本当にあたりませんか」彼等が先生に詰め寄ります。
「ああ、当たらん」
「じゃあ、試していいですか」
「けっこうや」

売り言葉に買い言葉です。
その場で何月何日に大久保の射撃場で鉄砲の的になる、という誓約書を書かされ、拇印まで押すはめになってしまいました。しかもその写しを軍の裁判所のようなところへ持っていって、確認までしてもらうという念の入れようです。

これで植芝先生は撃たれて死んでも、文句が言えないようになってしまいました。

さてその当日、先方から迎えが来て、大久保の射撃場へと植芝先生を連れていきました。
お供は私と湯川さんの二人です。奥さんが大変心配されて、やめるように懇願したのですが、先生は「いや、大丈夫。あんなもん当たらんよ」とのんきなものです。

私と湯川さんも顔を寄せ合って、「こりゃ葬式を用意しといたほうがいいんじゃないか」などと相談していたくらいです。

射撃場に着くと、もっと大変なことが私たちを待っていました。

私はてっきり、一人の人が先生を撃つのかと思っていたら、なんと六人がかりだというのです。用いた銃はピストルでした。ピストルの有効射程距離が二十五メートルだそうです。

射撃場ではその距離に人間の形をした的が置かれています。
しかし、そのときは人形の代わりに、植芝先生が的の位置に立つことになりました。

そして、こちらのほうで、六人の検査官がピストルを構えました。
二十五メートルというと相当の距離です。
あんなところから先生はいったいどうするというのだろう、と私は息を呑んで見守っていました。

「一、二、三」で六つの銃口が一斉に火を吹きました。

砂ぼこりがもうもうと舞い上がったかと思うと、次の瞬間、六人のうちの一人が宙を舞ったのです。

なんということでしょう。
先生がいつの間にか六人の後ろに立って、ニコニコ笑っているではありませんか。

狐につままれたような気分とはこのことです。
いったい何が起こったのか、私にはまったく理解できませんでした。

私ばかりではありません。
その場にいただれもが、ただ驚くばかりで言葉を失っています。

納得のできない様子の六人の検査官が、もう一度やらせてくれと申し出ました。
先生は「かまわんよ」と、いたって涼しい顔です。

もう一度、六つの銃口が先生に向かって火を吹きました。と、今度は端っこの人が投げられて宙に舞ったのです。先生はまたもや、いつの間にか後ろに立っていました。

私は茫然となってしまいました。
今度こそ何が起こるか見極めてやろうと目をこらしていたのですが、結局、先生の動きがなにひとつ見えなかったからです。

立っている先生に向かって六つのピストルの引き金が引かれた。そこまではわかっています。

ところが、次の瞬間にはもう、先生は二十五メートルの距離を移動して、人一人を投げ飛ばしているのです。

これはもう、まぎれもなく神技としか思えません。
首を傾げるだけの軍の関係者をあとにして、先生は意気揚揚と引き上げたのでした。

 
帰りしな、私は先生に「いったいどうやったんですか」と尋ねました。
それに対する先生の答えは、次のようなものでした。

彼らがピストルの引き金を引こうとすると、黄金の玉のような光が飛んで来る。
弾はそのあとから来るから、よけるのはなんでもない。

それに、六人同時に撃ってるつもりでも、一度には出て来ない。
必ずバラバラだから、いちばん先に来るやつのところに行けばいいのだ、と。

「金の光は、ビューんとすごい音がするんだよ」と先生はおっしゃってました。

音がしたときに走り出すんだそうです。そのときはまるで忍者のような、腰をかがめて小走りにはしるような格好になるそうです。

それで飛びこんでいって、あとから弾が来たときにはもう半分くらい中に入っているのです。

先生は、金の光が来てから弾が届くまですごい時間があるというんですが、見ている方にとっては、まさに一瞬にしかすぎません。先生が間合いをつめるのは、まったく見えないわけです。 

・・・(中略)・・・

この話には後日談があります。

私の知り合いで、山梨に佐藤貞次郎という猟師がいました。
この人が鉄砲撃ちの名人なのです。

たとえば、山鳥を撃つ場合、猟師が山鳥が沢から降りてくるのを狙い撃ちします。
このときの山鳥のスピードは時速二百キロくらいになるんだそうです。

山鳥というのは、頭を撃たれると、そのままストンと落ちるのですが、腹を撃たれると、滑空していって遠くに落ちてしまう。だから、猟師は皆、頭を狙ってその場に落としたいのですが、なかなかうまくいかない。

ところが、この佐藤さんは百発百中で頭を射抜くのです。
まさに鉄砲撃ちの名人中の名人です。

あるとき、私はこの佐藤さんに、植芝先生が鉄砲をよけた話をしました。

「それでもワシの鉄砲はよけられん」と、佐藤さんは自信満々です。 
「人間の頭なんてこんなにデカい。ワシは山鳥の頭を撃つんじゃ。人間に当たらないわけがない」

そう言って、佐藤さんは先生と勝負するために山から下りてきました。

私は佐藤さんを植芝道場に連れていって、勝負をしたい由を先生に伝えました。この挑戦を先生は受けたのです。

道場の奥に先生が正座して座り、離れたところから佐藤さんが猟銃を構えました。私は固唾を飲んで見守っていました。

佐藤さんの指が今まさに引き金を引こうとしたときです。

「まて、あんたの鉄砲は当たる」と、先生が制しました。
「あんたはワシを撃ってやろうなどという気持ちがこれっぽっちもない。最初から当たるつもりで撃とうとしている。そんな人の鉄砲はよけられない。たいしたものだ」

先生はそう言って、佐藤さんに頭を下げました。
佐藤さんはほんとに喜んで、また山に戻っていきました。

私はすっかり感心してしまいました。 
佐藤さんの鉄砲も名人なら、それを察知して勝負を退いた植芝先生も名人です。
 
まさに、名人は名人を知るというところでしょうか。

 (塩田剛三著「合気道 修行」竹内書店新社より)

ここで下線部を引いた「金の光」っていったい何んでしょうねぇ。
「気」みたいなものでしょうか。

それにしても、弾よりも早く走る盛平翁は、まさにスーパーマンですね(笑)。


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